2018年度 活動レポート 第319号:新潟大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第319号

これからの超高齢社会に求められる先端歯科医学研究
Dental and orofacial advanced research required in a super aged society -Now and Future-

新潟大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野
井上 誠さんからの報告

2019年2月12日から2月21日まで、台湾陽明大学より3名、タイタマサート大学より4名(他にシニアメンバー2名、来日経験者1名)の若手臨床家と研究家を招へいし、現在新潟大学で行われている様々な研究を見学・体験する機会をもってもらうためのプログラムを実施しました。

WetLabでの記念撮影

2月13日は、摂食嚥下障害の臨床がテーマでした。超高齢社会において高齢者を中心とした摂食嚥下障害の現状と一般的な臨床内容、さらに歯科医療が携わるべき口腔機能を起点とした臨床のあり方についての講義を行った後に、参加者を2班に分けて嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査を体験してもらいました。

嚥下内視鏡検査の体験

2月14日は、咀嚼を知る実習がテーマでした。世界に先駆けて保険診療の一部として行われている咀嚼能率測定の体験実習を行い、咀嚼障害者の食塊形成の悪さ、嚥下への負担を疑似体験してもらいました。

2月15日は、ヒト実験をテーマに咀嚼・嚥下機能に関わる神経筋機構について、筋電図ならびに嚥下造影検査を用いた生理学的な実験を体験してもらいました。食物の咀嚼嚥下時における咬筋および舌骨上筋群の筋電図ならびに嚥下造影検査との同時記録や経頭蓋磁気刺激体験などを行ってもらいました。

講義風景

休日をはさんで、翌月曜日の2月18日は、動物実験における嚥下誘発および同定方法の説明や末梢への機械・化学・電気刺激による嚥下誘発実験の見学、食の支援ステーションの見学を行いました。食の支援ステーション見学では、病院内に介護食の試食・介護食器具の試用、口腔ケア用品の使用体験ができる場所があるということで、皆さん目の色を変えて見学していました。

食の支援ステーション見学

2月19日は、口腔領域におけるTissue Engineeringの特殊性について触れた後、培養口腔粘膜作成方法と移植法の基本を講義しました。細胞培養室では、患者さんから採取された口腔粘膜組織を用いて、ルーティーンワークとして行われている患者の口腔粘膜上皮細胞の培養立ちあげを見てもらったのち、各大学の代表者1名により実地で細胞培養を体験してもらいました。

2月20日は、口腔機能に関する基礎と臨床について、歯周病と痛みをテーマとした講義と実習を行いました。参加者の口腔内細菌数を測定するハンズオンを行った後に、痛みのモデル動物を用いた行動学的な実験と痛み刺激に伴う脳での活動電位を観察・定量化する電気生理学的な実験を経験してもらいました。

動物行動実験見学

2月21日の午前はドライマウスの講義と実習を行いました。実習では、ドライマウスの治療に用いられる漢方および保湿剤の試用や唾液腺マッサージの手技についての体験を行いました。その後、閉講式を行い、全員で記念写真を撮って解散となりました。タイトなスケジュールの中、参加者は大いに新たな臨床、研究分野の体験を楽しみ、また一生懸命に参加してくれたことで忙しくも充実した日々を過ごすことができました。本プログラムをきっかけとして、さらなる交流や共同研究推進への足掛かりができたと確信しています。

最後に、本プログラム実施の機会を与えた頂いたさくらサイエンスプログラム、そして本プログラムの実施を支えて頂いた多くのスタッフの皆さんには深く感謝申し上げます。