2018年度 活動レポート 第210号:奈良女子大学附属中等教育学校

2018年度活動レポート(一般公募コース)第210号

NARA SAKURA Science Camp 2018

奈良女子大学附属中等教育学校からの報告

NARA SAKURA Science Campは、アジア6か国の高校生が共に学ぶ科学技術のワークショップを実施することにより、さまざまな文化的背景を持つ生徒達が協働して、英語で科学の課題を探究し、国際的な場で活躍するために必要な、論理的思考や議論・表現する能力を育成することを目的とした3年計画のプログラムであり、今年が最終年度です。2018年9月1日(土)から9月9日(土)の予定で実施するはずでしたが、台風21号の影響による関西空港の閉鎖という想定外の事態に見舞われ、プログラムの一部を変更し、帰国も1~2日早まることとなりました。

本年は、従来通り、インドネシア国立第10サマリンダ高校、台湾の国立中山大学附属國光高級中学校、ベトナム国家大学ハノイ校自然科学大学附属英才高校、韓国の世宗科学芸術英才高校、ウズベキスタンのタシケント工科大学附属第1アカデミー学校から高校生21名と引率教員5名に加え、サイエンス分野での交流のあるタイ王立チュラボーンサイエンス高校チョンブリ校および、KAISTのKAIST Science Outreach Programからもそれぞれ生徒4名、引率教員1名を招へいしました。そのうちベトナム・ウズベキスタンの9名の高校生と2名の引率教員はさくらサイエンスプログラムの支援による招へいです。また、本校からの参加生徒は、20名でした。

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オープニングセレモニー
(ウズベキスタンの生徒がお祝いのパンを持っています)

先着した、ウズベキスタン、ベトナム、インドネシアチームは、初日に大阪市立科学館を見学し、その後、大阪散策を行いました。

全校が揃った初日には、アイスブレイクを目的とした「世界遺産ツアー」で、奈良に到着した国から順に本校生徒と市内を散策し、東大寺や興福寺の日本の古建築を見学し、その後、本校にて学校紹介や文化交流などを行い、翌日のプロラグラムに向けて生徒同士が親睦を深めました。また、期間中には、必ずホームステイプログラムを実施し、本生徒の家庭に宿泊し、日本文化に触れてもらう機会を提供しました。

科学技術ワークショップの初日は、台風21号の接近で暴風警報が発令されたので予定されたワークショップは中止となりました。海外からの生徒はグループに分かれホテル内で、数学の難問に取り組みました。ワークショップは、9月5日(水)と6日(木)の2日間で開催されました。2つのグループに分かれて、講座A「How to distinguish close related RNAs and DNAs」(奈良女子大学 渡邊教授)と講座B「Mathematics applied to biology」(奈良女子大学 高須教授)を実施しました。

講座Aでは、DNA鑑定の手法を体験的に学ぶことをテーマに、DNA抽出とRNA抽出、そしてそれぞれを鋳型として同じ遺伝子の塩基配列の増幅を行うことを通して、RNAとDNAの構造的違いを考察し、その後、実験手法とその結果についてディスカッションを行いました。

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科学技術ワークショップA講座【RNA, DNAの抽出】

講座Bでは、生物の個体数の変化を数式化し、得られた数式モデルをコンピュータによりシミュレーションして考察するなかで、さまざまな要因をどのように数式に反映させるのか、数式モデルを作る際にはどの要因を反映させるのかについて生徒たちがディスカッションを行い各班の考察についてプレゼンテーションを行いました。

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科学技術ワークショップB講座【生物の個体変化をコンピュータでシミュレーション】

研究施設訪問では、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の協力の下、情報科学領域・ソーシャル・コンピューティング研究室の荒牧 英治特任准教授、物質創成科学領域生体プロセス研究室Yalikun Yaxiaerj准教授の講義を受け、それぞれ積極的な質疑が行われました。

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NASIST見学

また、昨年度からの新たな取り組みとして問題解決型ワークショップを行っていますが、今年度は、決められた材料(プラスチック段ボール,車輪,ゴム,プロペラなど)で自動車を作るという課題を与えました。これはものづくりを通して、協力して課題解決を行うもので、生徒は限られた材料を用いてアイデア、スピードなどの点ついてコンペを行いました。

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問題解決型ワークショップ「課題:車を自作する」

関西空港の閉鎖に伴い、帰国フライトを、他空港へ振り替えたため、時間を短縮して行わざるを得ませんでしたが、ワークショップや研究室訪問、ホームステイなど、このプログラムの核となるプログラムは実施することができました。科学に対する意欲が高いアジアの高校生が集まり、共通の課題に取り組み議論することにより、考え方や取り組み方の違いを認識する有意義な機会となりました。