2018年度 活動レポート 第154号:異文化理解フォーラム

2018年度活動レポート(一般公募コース)第154号

日本の歩みと現在を知り、自分の夢が見えた日本訪問

異文化理解フォーラム 欧陽蔚怡さんからの報告

中国山西省五台県職業高校と実験高校の生徒14名と、引率者の教育局庁長、校長、教員合わせて5名(自費2名)を招へいしたさくらサイエンスプログラムを、2018年9月23日~10月2日の期間で実施しました。

一行は、9月23日早朝山西省五台を出発し、バスで350キロの道のりを北京空港まで旅し、夕方中部国際空港に到着しました。

日程
2日目 午前「名古屋科学館」 午後「トヨタ産業技術館」
3日目 午前「自動車製造工場・トヨタ会館」 午後「豊田土地改良区・枝下(しだれ)用水」
4日目 午前「豊田鉄工 ベビーリーフ生産工場」 午後「愛知県農業大学校」
5日目 公益財団法人オイスカ
6日目 午前「とよたエコフルタウン」 午後「愛知県立猿投農林高等学校」
7日目 早朝「豊田市公設地方卸売市場」「百年草福祉施設」 午後「足助村」で懇親会
8日目(台風のため、予定を急遽変更) 午前「山村センター長レクチャー」 午後「総振り返り・報告会準備」
9日目 午前「豊田旭地区山村訪問」 午後「報告会・証書授与」
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生徒たちは、出発の直前までの2ヶ月の研修を経て備えた「一生けん命学ぶ」姿勢と心構えで来日しました。毎日、その日の活動を振り返り、感想記録の提出を日課としました。本報告では、生徒たちの感動を生で伝える意図で、下記のように生徒たちの感想記録から主なものを抜粋し、その翻訳を載せます。

  • 名古屋科学館では、実際体験できるものから動きを見せる展示まで、その面白さに圧倒されました。
  • 科学館では自分の専門科目でなじみの元素周期表が各元素に対応する実物と共に展示されていて、とても理解し易かった。また、様々な実験模型があり、例えば竜巻のシミュレーションや天文館、低周波音を小さな粒で振動を視覚化した実験装置等がありました。理科の基礎知識や科学をこのように、解り易く展示していることに感激しました。
  • トヨタ産業技術館では、見学前の解説レクチャーと、見学後のスタッフとのQ&Aを通して、創業者達の夢とトヨタの高邁な理念を知り、感動しました。
  • 紡績技術から自動車工業へと転換する過程の「創意と工夫」が分かるように、実際に動くような装置が展示されていました。それで、技術の発展を体感し、創業者の豊田喜一郎氏が、国のために尽くそうとした気持ちを味わい、たゆまぬ研究と人々のために常に奉仕する考えに感動しました。
  • 『研究と創造』に努めて、満足しない、あきらめない、一番でいいではなく常にもっと良くすること、これがトヨタ産業会館で教わったことです。
  • 一台の自動車が、想像以上の速さで製造されることに、とても驚きました。
  • 工場農業に進出する豊田鉄工会社では、ベビーリーフ生産工程の最先端コントロール技術による仕組みを知り、農業の将来について考えさせられました。
  • 豊田鉄工では、日本の無土養液栽培方式を知りました。今後自分の目指す専門を、このような栽培方法を学ぶ方向に変更したいと思います。
  • 愛知県農業大学校の最新設備と実践的なカリキュラムは、中国のとは大きな違いがあることを知り、学習環境に恵まれた日本で勉強したいと思います。
  • 愛知県農業大学校と愛知県立猿投農林高では、生徒が栽培技術だけでなく、農業機械の運転操作、販売についても学び、更に自分たちが育てた作物を住民に販売しています。
  • 公益財団法人オイスカは、発展途中の国の人材育成や開発協力などの支援活動を行う団体で、外国人研修生が研修や訓練を受けています。オイスカでの一日訪問で、研修生達との交流と畑での作業を体験できました。
  • 研修生達は私たちが来るのを知り、中国語を勉強して歓迎してくれました。とても親切ですぐに打ち解けました。また私たちが自己紹介したときは真剣にメモを取ながら聞き、私たちを尊重してくれる姿勢に感動しました。短い時間でしたが、熱心に勉強に取り組んでいる様子を見ることができました。
  • 研修生達と農地へ行き、落花生が育つ過程を学び、収穫をしました。研修生達は、落ちてしまった1粒の落花生も見逃さず拾って、丁寧に作業をしていました。自分達の育てた食べ物を、決して粗末にしない姿に感動しました。このような姿勢から私たちも多くのことを学んだ気がしました。
  • 「とよたエコフルタウン」は未来の環境都市のモデルとして、様々な技術や材料とライフスタイルに関する情報を発信する場で、環境保護の先進技術を研修し体験できました。
  • 電気エネルギーと水素エネルギーで地球温暖化を防止する低炭素生活、シロアリの巣穴からヒントを得て作られたスマートハウス、人工の蜘蛛の糸で作られた防弾チョッキ、鋼鉄線を超える強度の手術用の糸等、先進技術を展示で知りました。
  • 豊田市公設地方卸売市場で朝市の競りと卸売場の施設見学し、その後のレクチャーで卸売場の仕組み、役割と、そこで働く人々の様子を見て学びました。
  • 卸売市場では、わずかでも傷んだ野菜や果物はすぐに捨てられ、健康とコストを考慮したうえでの措置だそうだが、とてももったいなく無駄になっていると思いました。野菜は、農家で色んな方法で栽培され、夫々の処理がなされ、そして安全チェック、包装、市場に出荷され、競売りにかけられて、消費者に販売されます。中国での過程とはずいぶん違うことが分かりました。
  • 足助村での懇親会で、足助高校の先生や生徒の皆さんは、私たちや中国の事について事前に色々調べて私たちに質問してくれました。皆さんの私たち及び中国への関心の高さと、理解しようとして下さる姿にとても感動しました。そして感謝でいっぱいです。
  • 交流を通して、日本の高校生はみんな三国演義の諸葛亮がとても好きだとか、趣味や今勉強していること等を知ることができました。そして中国に来てみたいと思っていることを知り、とてもうれしかった。
  • 事前のレクチャーで日本の山村の過疎化の現実と、その問題解決への模索と取り組みについて聞きました。翌日、山村を訪れて地元の人達と交流し、その方達の気持ちと努力を肌で感じる機会を持つことができました。
  • 今、日本の山村では、人口減少、高齢化が進み消滅の危機を抱えています。中国でも同じように、若い人は気にも止めずに、都会へ出ていき、農村の家は荒れて来ています。問題の深刻さを実感するとともに、豊田市では都市部から山村へ移住を促す努力が進んでいることも学びました。

今回の研修の主要テーマは農業です。中国の農村で育ち、その現実をよく知る生徒たちは、この訪問で日本の農業に関する知識や研究を知り、学校施設などを見て交流して、生徒たちの視野が限りなく広がったと実感します。研修したことに触発され、将来の夢、職業の選択を活き活きと語った生徒もいます。目にしたものから、中国の近い将来を連想し、その中にいる自分の未来像と、具体的な夢を掴むことに繋がったと思います。この10日間の研修を終えてのアンケート調査で、日本に来るまでは思いもしなかった日本への留学という夢が湧いたと言っています。このことは今後の勉強の目標と大きな励みになるでしょう。

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今回、日本の工業を代表するトヨタ自動車の発展の歴史と、それを支えた理念に触れ、更に派生する農業と環境保護の先進技術も見聞する一方で、中国と同じ山村の過疎化問題を抱え、その解決に努力する人達に心を動かされました。生徒たちにとって、正に「日本の歩みと現在を知り、自分の夢が見えた」日本訪問になったのではと考えます。

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活動の実施にあたって、長年日本で生活する中国人ボランティア団体のご協力がありました。ボランティアの皆さんは、通訳だけでなく、日中両国の未来をつなぐ架け橋として、高校生たちに社会貢献の姿勢を見せて下さり、招聘者達の日本への理解を促す役割を果たして頂きました。高校生全員の感想に、このように外国で活躍する中国人の生き方に憧れるとありました。同行した教育局長や校長及び教員達からは、この10日間での生徒たちの意識の成長ぶりには感無量であるとの感想が寄せられました。さくらサイエンスプログラムに参加したことが彼らの人生に大きな影響を与えたことを確信しました。

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この計画を実施する機会を与えてくださった、さくらサイエンスプログラムに深く感謝します。

この活動に理解と協力をしていただいたすべての機構と人々に感謝を申し上げます。