2018年度 活動レポート 第115号:上智大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第115号

スマートな社会実現のための制御技術を目指した日中大学院生交流

上智大学理工学部機能創造理工学科
教授 申鉄龍さんからの報告

平成30年8月16日~8月25日の10日間、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、中国の武漢大学から11名の大学院生を招へいし、日中の大学院生が一緒になってエネルギーと環境問題を考え、自分達の専攻領域である制御工学の視点からスマートモビリティを実現するための技術創成に如何に挑戦していくかをテーマにした、研究交流を実施しました。

武漢大学からの招へい者は全員が大学院生(博士課程4名、教員1名含)でしたので、ホスト研究室である理工学部申研究室の大学院生が交流に参加し、自動車エンジン制御に関する体験実験では申研究室の研究員や博士後期課程院生がチューター役として協力しました。

10日間の交流は主に以下の4つの活動に分けられます。

①自動車エンジンの空燃比制御手法を考案し、申研究室のエンジン制御実験設備を使って検証実験を行いました。招へい者の来日前に武漢大学を訪問する機会があり、招へい者全員と面会して研究交流テーマを共有していたため、招へい者が事前課題やシミュレーションを行う等、万全の準備を整えて来日することができ、体験実験は順調に効率よく進めることができました。

自動車エンジンにおいて燃料噴射量をリアルタイムで調整することによって、気筒内の一回一回の燃焼を理想状態に制御することによってエンジンの効率と排気性能を向上させる技術を理解し、自ら考案したアイデアを実装するためには、どのような課題を解決しなければならないかを学ぶことができました。

写真1
エンジン実験装置の説明を聞く招へい者

②ホスト研究室が主催する自動車動力システム等に関する講義を聴講し、ポスターセッションでは招へい者からもポスタ―の発表を行い、参加者との議論を深めました。

写真2
ポスターセッション実施風景

③日本の科学技術を理解すべく日本科学未来館やパナソニックセンター東京を見学しました。日本科学未来館では皆が熱心に展示を見て回り、パナソニックセンター東京のスマートハウス技術に関する展示や説明を聞いて大変刺激を受けた模様でした。

写真3
パナソニックセンター東京視察

④交流期間の終盤には、招へい者全員と申研究室の一部メンバーがトヨタ自動車株式会社東富士研究センターを訪問し、先端研究施設を見学し、担当研究部門の責任者をはじめ、トヨタ自動車のエンジン制御の専門家から特別講義を受けました。当日はトヨタ側の研究員達も交えて懇親会を開催し、日本の産業技術や文化について議論し、大変貴重な体験を得ることができました。

写真4
特別講義受講風景

招へい者による最終報告会では、「短い日程でありながら多くのことを学び、体験することができた」と皆が感想を述べました。特に、エンジン制御の心臓部ともいえる電子制御装置(ECU)を用いた実験検証の体験や自動車産業開発現場を見学し、トップレベルの研究者の講義が聞けて交流できたことには非常に刺激を受けた様子でした。

今回のさくらサイエンスプログラムの受入れ担当者として、交流研修を終えて帰国する招へい者達の笑顔をみて、非常に有意義なプログラムだったと感じ、担当してよかったと思いました。

最後に本プログラムでの学術交流活動の機会をいただきましたさくらサイエンスプログラムに対し、日中グループ一同を代表して感謝申し上げます。

写真5
招へい者の皆さんと曄道佳明上智大学長(右端)、申鉄龍教授(左端手前)