2018年度 活動レポート 第107号:電気通信大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第107号

環境災害を可視化する! IoT計測技術の共同研究

電気通信大学からの報告

2018/10/8 ~ 2018/10/18 の11日間、インドネシア・バンカ島の学生4名教員3名を電気通信大学に受け入れました。初日には福田 喬学長と面談し、バンカ島での環境問題について情報交換しました。

写真1
電通大学長と記念撮影

バンカ島は世界有数のスズの産地として知られ、その殆どはハンダの原料として使われており、私たちの生活とも密接に関わっています。また同島のスズ鉱山ではウランやトリウム等の天然放射性物質も一緒に算出され、周辺土壌が非常に高い放射線量を持っています。

当研究室では現地の鉱山局と連携し、スマートフォンを使った安価な放射線計測技術や、作業者・地域住民の放射線リテラシー向上に向けた教育・能力開発のフィールドワークを行っています。研究交流には協力者のブルゴーニュ・フランシュ=コンテ大学(フランス)のFederico Tajariol准教授も参加し、市民リスクコミュニケーションのあり方について活発な意見交換がなされました。また本学のインドネシア人留学生4名も参加し、交流を行いました。

次の5つの観点から、本邦・現地どちらの側にも非常にポジティブな影響がありました。

1.研究交流

鉱山による放射線汚染という大きな環境問題を持つバンカ島の学生・研究者と共に、電通大で設計した放射線測定技術とIoT技術(組込、無線通信、クラウド)を組み合わせた試作・短期ハッカソンを行うことで、技術交流が達成されました。さらに招へい期間終了後はセンサを現地に持ち帰ってもらい、引き続き島内にて実証試験を行うことができるため、今後の共同研究の発展にも寄与できました。

2.産学連携

電子機器メーカー(宮城県石巻市)を訪問し、モノづくりの現場を視察した上で開発者担当者とバンカ島のスズ(RoHS対応高機能ハンダ)の使われ方について議論しました。日本のモノづくりの現場をみることで、将来の日本での就業意欲が培われたようです。また現場のワーカーも海外からの視察に刺激され、自ら扱っている材料(ハンダ)のトレーサビリティや環境対策についてより強く意識するようになりました。

写真2
モノづくり工場の視察
バンカ島から出荷されたスズがハンダとなって使用される現場をみる

3.被災地域交流

福島原発周辺のNGO(市委託)ツアーに参加し、語り部と議論しながら復興に必要な要素(技術、共助、情報、専門家や行政の役割)について考えました。福島原発の間近まで迫る距離から災害の実情を見ることができ、またJビレッジや新造された火力発電所も見学し、電力問題の重要さを肌で感じとることができました。語り部もインドネシアからの見学者は初めてであり、また現地にも福島と同じくらい高線量の放射線問題があることを初めて知ったとのことで、市民交流の面からも実り多いツアーとなりました。なおバンカ島でも現在、石炭火力発電とトリウム発電所の建設計画があるとのことで、福島の実情を非常に臨場感を持って受け止めたようです。

写真3
福島で放射線測定の実態を調査

4.多拠点の学術交流

当方の共同協力者(東海大 内田教授、日大 松野准教授)を、仏Federico准教授と共にそれぞれ訪問し合同研究ゼミを開催、日本での最新の防災研究事例を学ぶと共に、日本人研究者・学生を交えた研究議論を行いました。3つの学術機関を訪問することでそれぞれの特色が良く感じ取ることができ、特に修士課程の留学を希望する学生にとっては貴重な経験となってようです。また日本側の学生もインドネシアと積極的にコミュニケーションをして、初めての英語でのプレゼンテーションや議論も良い刺激となりました。ちょうどインドネシアで大きな地震と津波があったことから、現地の災害状況と、それを支える防災システム、あるいはフェイク・ニュース問題について活発な研究議論が交わされました。

写真4
日大の学生と交流

5.交際連携の推進

交流にあたって招致者が本学学長と面会し、活動の重要性を組織間で理解し合うことができました。また本交流をきっかけに信頼関係が生まれ、今度は共同でJICA事業(草の根支援)へ応募することが決まるなど、国際共同研究を進める上での大きな展開がありました。また本交流の様子はバンカ島の地元有力新聞「バンカ・ポスト」でも写真入で大きく取り上げられ、地域でも注目されています。この他、電通大や訪問先の東海大の公式Webサイトでもニュースを掲載し、国際交流のアピールとさらなる進展に貢献しています。

写真5
修了証の交付