2018年度 活動レポート 第73号:信州大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第073号

マレーシアプトラ大学生のための研究室体験プログラム

信州大学工学部からの報告

さくらサイエンスププランの支援を受け、平成30年6月25日から9日間のプログラムで、Universiti Putra Malaysia(UPM)の化学・材料系と電気電子系の学部、修士、博士課程所属学生10名と引率教員1名を受け入れました。

日本の大学の工学系研究室は、世界的に見ても特殊な指導環境です。濃密な研究指導だけでなく、苦楽を共にする研究室活動の下で学生が相互研鑽する場となっていて、帰属意識や仲間意識が強く、研究室での経験が公私に渡り、生涯に渡って良い影響を与えています。他国の大学には見られない特殊な教育現場です。そのような日本の先端的研究や高度技術のベースとなっている技術者・研究者の育成現場を体験してもらうことは、日本への理解と信頼を与えるものだと考えて企画しました。

実施内容は、研究室活動の他に、企業見学、文化体験ツアー、大学院授業への参加、学生活動のGlobal Caféでの発表と討論参加です。

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信州大学アクア・イノベーション拠点で透水試験を見学

企業見学では、セイコーエプソン(株)とマルコメ(株)を見学しました。エプソンでは、企業展開の詳しい現況説明を受け、社内のものづくり博物館や水不使用でコピー用紙を再生させる世界初の機械を見学し、規模の大きさや技術力の高さに接し、多くの質問をしていました。マルコメでは、味噌の歴史、製造法、素材、発酵工程や製造管理について詳しい解説を受けました。味噌が健康食品であって、多くの日本人が味噌汁をほぼ毎日食していることを知るとともに、日本が世界一の長寿国であることを初めて知った学生もいました。自動管理された発酵漕や製品の自動梱包工程を見学し、食品会社の衛生管理や食品を扱うことへの責任と日本製品の信頼性について感じ取っているようでした。

文化体験ツアーでは、蕎麦や忍者の里、戸隠神社で有名な戸隠に行きました。ムスリムの学生が多かったので神社見学は大丈夫かと心配し、事前にUPMの担当教員に確認し進めました。そば打ち体験と自分で打ったそばを食して楽しむだけでなく、食器を手で持ち、大きな音を出してすするという日本人のそばの食べ方を知り驚きながらも、一生懸命真似て食べていました。戸隠神社はパワースポットの一つであり、御神木に手を当てて何か願い事をするように目をつぶる日本人観光客を見て、自分達も真似して木に触れていました。忍者屋敷では、施設の一部を利用した短いアスレチック遊具があり、壁渡りなどかなり体力を使うものでしたが、UPMの先生が率先してトライし学生達を鼓舞したため、学生も心から楽しんでいました。学生と一緒に一生懸命楽しむ指導者の存在が学生を勇気づけ、企画の成功の度合いを高めてくれる重要な要素であることがわかりました。

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戸隠そば博物館(長野市)でそば打ち体験

研究室体験では、学生の専門分野ごとに5研究室に配属し、短期間ながら色々なLABワークを体験しました。最終発表会での報告内容を聞いて気づきましたが、マレーシアでは研究の打ち合わせは指導教員と学生個人でミーティングすることが多く、例えば朝9時に研究室全学生と指導教員が集まってゼミや研究報告会をするなど、日本の研究室にとっての日常が、彼らにとっては新鮮であることに改めて気づかされました。また、電子顕微鏡やX線解析装置など、日本の研究室では簡単な解析であれば学生自身や研究者自身が解析装置を操作してデータを取ることが当たり前のように行われていますが、マレーシアでは専門の技術作業者が操作するので大型解析装置に触れることはなく、操作を体験した学生は貴重な経験ができたと喜び、研究者が自分で解析装置を操作することの重要性に気づいたようでした。

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参加者全員で配属先研究室を見学
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研究室で吸着実験を行うためにメチレンブルー水溶液を調製している様子

最後になりますが、この度は支援をしていただき、本学としても貴重な経験と機会を与えて頂きましたことを心より感謝するとともに、さくらサイエンスプログラムに厚く御礼申し上げます。本当に有難うございました。

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成果発表・修了式終了後に記念撮影