2018年度 活動レポート 第16号:放射線医学総合研究所

2018年度活動レポート(一般公募コース)第016号

重粒子線生物学研究の発展を目指した日本と中国の重粒子研究拠点間の研究交流

放射線医学総合研究所 放射線防研究センター
勝部孝則さんからの報告

さくらサイエンスプログラム交流事業により、2018年4月30日~5月10日の日程で中国科学院近代物理研究所(IMP)から2名の大学院生が来日しました。

IMPは、重粒子線発生装置 Heavy Ion Research Facility in Lanzhou (HIRFL)を開発、運営しており、中国の重粒子イオンビーム研究の中心拠点です。一方、放射線医学総合研究所(放医研)では、世界初の医療用重粒子線発生装置(HIMAC)を用いて、1994年から重粒子線がん治療を実施しています。また、重粒子線の生物影響に関する研究にも取り組んできました。

写真1
放医研動物飼育施設見学の様子。
飼育室に病原菌等を持ち込まないよう手指を洗浄後、帽子、マスク、清潔な上着を着て入室します。

今回、IMPから2名の大学院生を放医研に招へいし、研究交流を行いました。11日間の滞在期間中、HIMACや動物飼育施設の見学、重粒子線生物影響研究に関する情報交換を行いました。放医研で実施している重粒子線の生物影響に関する研究のデータ解析にも参加してもらいました。ここで得られた解析結果は、将来の共同研究につながる可能性があります。

写真2
放医研で実施しているFluorescence in situ hybridization (FISH)法による染色体異常解析の例。
(左)正常細胞、(右)染色体転座のある細胞。矢頭で示した部分に転座が有ることが、色の違いで分かります。招へい者に、重粒子線照射によりマウス脾細胞に生じた染色体異常の解析に参加してもらいました。
写真3
パソコンのモニタ―上で、FISH法による染色体画像解析を行っている様子。
ここで得られた解析結果は、将来の共同研究につながる可能性があります。

また、歓送迎会等を通じて文化的な交流を図り、放医研スタッフとの間に信頼関係を構築することも出来ました。離日前日には、放医研・放射線影響研究部メンバーを対象に、現在IMPで実施している研究について紹介してもらいました。発表に対する質問やコメントなど、活発な議論が交わされました。

写真4
離日前日、IMPで実施している研究について紹介してもらった後、
放医研・放射線影響研究部部長から招へい者に修了証が授与されました。

今回の日本での研修は、2名の招へい者にとって、中国国内では得られない貴重な経験になったと思います。招へい者とはその後も、電子メールを利用して連絡を取り合っています。重粒子線を用いた生物影響研究を実施できる施設は世界的も限られており、IMPと放医研が協力することは、この分野の発展に大きく貢献することが期待されます。

写真5
研修の合間の食事会の様子。放医研の近くのラーメン屋で。