2016年度 活動レポート 第303号:新潟大学大学院医歯学総合研究科

2016年度活動レポート(一般公募コース)第303号

超高齢社会に求められる歯科医学研究
Dental and orofacial research required in a super aged society

新潟大学大学院医歯学総合研究科からの報告

新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野では、さくらサイエンスプログラムの支援により、2017年2月1日から2月10日まで、台湾陽明大学より4名、タイタマサート大学より2名の若手臨床家と研究家を招へいし、臨床見学、セミナー受講、研究を実施しました。

今後世界は、日本同様に高齢社会に向かっていきます。その中で歯科医療に求められるのは、単なる歯の治療のみではなく、「食べる機能をもつ」口腔の医療です。

本プログラムは、その礎となる歯学研究について、現在新潟大学で行われている様々な研究を見学・体験する機会をもってもらうことを目的として実施されました。

プログラムは、全員が来学した2月1日にオリエンテーションを実施し、翌日の2月2日よりスタートしました。

2日午前、はじめに、嚥下障害が顕在化したことで広く摂食嚥下リハビリテーションが知られることとなった日本の現状と、一般的な臨床内容についての講義を行いました。

写真1
講義風景

午後は、新潟大学医歯学総合病院にて嚥下障害患者の嚥下造影検査の見学を行い、さらに参加者を被験者として、実際に臨床で行われている嚥下内視鏡検査を体験しました。

3日午前は、2名1班に分かれて、新潟大学医歯学総合病院にて行われている摂食嚥下リハビリテーションの臨床見学を行いました。昨日体験した嚥下内視鏡検査などの実際の使用を間近で見る機会を提供しました。

午後には、摂食嚥下機能に関わる、ヒトを対象とした基礎研究を見学しました。経頭蓋磁気刺激、ウェアラブル筋電計計測、食品摂取時の様々な生体記録同時計測体験などを通して、臨床につながるヒト実験の面白さを知ってもらいました。

写真2
ヒト実験室での記録説明

6日は、摂食嚥下機能に関わる電気生理学的研究を体験した後、動物を対象とした嚥下誘発とその記録方法の実験見学、午後からは、嚥下に関わる神経および筋の解剖実習を行い、つづいて当科の研究成果を中心に基礎研究に関するディスカッションを行いました。

写真3
動物実験の見学

7日午前は、口腔粘膜のTissue Engineering と培養口腔粘膜の臨床応用、Cell Sheet Technologyを利用した新しいインプラント開発の取り組みについての講義を行いました。

午後は、患者さんの組織を使ったWet Labを実施しました。

途中、ラボで培養されている乳歯歯髄から立ち上げたiPS細胞も供覧しました。また、新潟市内の老人施設に出向き、要介護高齢者の食事介助や口腔ケアの体験もしました。

写真4
老人施設でのデータ供覧
写真5
培養室でパチリ

8日午前、摂食嚥下リハビリテーションにおける補綴的アプローチについての講義を行いました。

写真6
講義風景

午後は、咀嚼能力測定法に関するレクチャーを行なった後、咀嚼能率測定の体験実習を行いました。グミゼリー30回咀嚼と10回咀嚼の違いから、咀嚼障害者の食塊形成の悪さ、嚥下への負担を楽しみながら疑似体験してもらいました。

写真7
嚥下内視鏡検査の体験
写真8
咀嚼機能検査の実習風景

9日は、ドライマウスの臨床の紹介が行われ、併せてドライマウスの治療に用いられる漢方および保湿剤の試用や唾液腺マッサージの手技についての体験を行った後、閉会式を行いました。

アンケート記入後に各自に修了証を授与。参加者から一言ずつのコメントをもらい、全員で記念写真を撮って解散となりました。

新潟大学と、今回来学を果たした台湾陽明大学、タイタマサート大学とは、すでに姉妹校の提携が結ばれていますが、今回のプロジェクトが成功に終わったこと、単なる研究レベルではなく、これからの歯科臨床に求められるニーズを肌で感じてもらったことで、今後の大学院進学への礎の役割が果たせたものと感じています。

実際、さくらサイエンスプログラムに応募してくる学生の反応はとてもポジティブで、受け入れ側としても毎日がとても充実していました。

最後に、本プログラム実施の機会を与えた頂いたさくらサイエンスプログラム、そして本プログラムの実施を支えて頂いた本学のスタッフの皆さんには深く感謝申し上げます。

写真9
皆でパチリ