2016年度 活動レポート 第38号:筑波大学大学院数理物質科学研究科

2016年度活動レポート(一般公募コース)第38号

藻類研究のための高精度デバイスの開発

筑波大学大学院数理物質科学研究科からの報告

筑波大学大学院数理物質科学研究科では、さくらサイエンスプログラムの支援により、2016年7月1日から7月21日の期間、タイのキングモンクット工科大学トンブリ校(King Monkut's University of Technology Thonburi)で講師として微細藻類に関わる研究を行っているPanwong Kuntanawat氏を受け入れました。

Kuntanawat氏はタイ国内で多くの賞を受賞し、微細藻類の研究者として高く評価されています。微細藻類は増殖能力が高く、将来の食料、エネルギー源として期待されていますが、Kuntanawat氏はこの研究に異分野の手法を積極的に導入しようとしています。

今回の研修では、微細藻類の分離・精製・評価を目的として、水溶液の微小液滴を空気で分離して操作するマイクロフルイディックデバイス、および微細藻類からの酸素発生量の測定を行うためのマイクロ酸素センサを複合化したマイクロフルイディックデバイスの作製と使用方法の習得をテーマとしました。

これらのデバイスの作製では、スパッタリング、リフトオフ等の微細加工技術の実習を行いました。また、微小流路内での液滴操作、電気化学ワークステーションを用いたマイクロ酸素センサの使用方法についての実習を行いました。

スパッタリング装置での金属薄膜の成膜

Kuntanawat氏は毎日受け入れ教員や学生と必ずディスカッションを行った他、研究室のゼミにも参加し、技術の習得だけでなく、関連する学術研究の理解も深めました。3週間の研修期間内に最大限の成果を得るには、研修者も受け入れ側も、熱意を持って効率的に作業を進める必要があります。Kuntanawat氏は、毎日朝から深夜まで熱心に実験を行っていましたが、この熱意は研究室の学生にも良い刺激となりました。

滞在中、同じつくば市内の産業技術総合研究所内のサイエンス・スクエアつくばと筑波宇宙センターの見学も行いました。産業技術総合研究所では、異分野の最先端の研究成果に接することができ、Kuntanawat氏は非常に勉強になったと喜んでいました。筑波宇宙センターでは、国際宇宙ステーションや人工衛星等の展示を見学しました。日本が世界に誇る宇宙開発技術に接することができ、Kuntanawat氏は興味深そうに見学していました。

休日には研究室メンバーと浅草やスカイツリー等の観光を行い、日本文化に触れてもらうことができました。日常生活においても、双方の文化等について多くを語ることができ、相互理解を深めることができました。

Kuntanawat氏はこのプログラムは非常にすばらしいとの感想を残し、研修に非常に満足して帰国しました。帰国後、今回の研修をもとに共同研究へと発展させ、協力関係を強化したいとのメールを受けました。このような機会をいただき、大変感謝しています。

マスクアライナーでの作業
デバイス作製のための試薬の調整