2015年度 活動レポート 第23号:八戸工業高等専門学校・産業システム工学科環境都市・建築デザインコース 清原雄康 准教授

特別寄稿 第23号

ペーパートラス橋の製作による八戸高専と香港IVE学生との国際交流
英語コミュニケーションで土木工学研究の交流
清原 雄康

執筆者プロフィール

[氏名]:
清原 雄康
[所属・役職]:
八戸工業高等専門学校・産業システム工学科環境都市・建築デザインコース准教授
 
交流期間の日程
1日目 到着
2日目 開講式、校内利用諸注意説明、施設見学、トラスの内容説明
3日目 城ヶ倉大橋、奥入瀬渓流、十和田湖、八戸工業地帯の見学
4日目 トラス構造の説明、紙材料の強度試験、有限要素解析コードによる部材計算
5日目 トラスの設計、製作、発表練習
6日目 作品発表、載荷試験、載荷試験、考察、閉講式
7日目 帰国
 

八戸高専学生がティーチングアシス

タント(T.A.)となり、英語コミュニケーションを通して、香港IVE(Institute of Vocational Education)の土木工学を専攻している学生とともに、制約条件下でのペーパートラスの設計、製作を実施した。問題解決能力と真の英語コミュニケーション能力の向上を目指し、交流が行われた。
本プロジェクトの実施前に、本校学生のみの事前語学研修を1か月前に1回と直前3日間に行い、挨拶やプレゼンの資料説明の英文、発音のチェックを行った。1か月前の研修では、You Tubeなどで英会話の動画をチェックし、英語に慣れるよう指示した。
初日の開講式の後は、学生主体で緊張をときほぐすためのじゃんけん大会、自己紹介、他者紹介ゲームなどがアイスブレイクとして行われた。ウエルカムパーティーを兼ねた昼食は和やかな雰囲のもとで行われ、積極的に会話がなされていた。その後は、プロジェクトの説明、トラス構造についてのプレゼン、具体的な部材に作用する軸力の計算方法などの説明が本校学生から行われた。香港IVEの学生も構造力学の授業で、同様の計算を既に学んでいたようで、本校学生からの講義は刺激になったようである。

トラス理論に基づいたペーパーブリッジの設計

2日目は、上路式アーチ橋では日本最大長である城ヶ倉大橋、奥入瀬渓流、十和田湖、八戸工業地帯を見学した。いずれの見学地でも本校学生が英語で説明を行った。
3日目は、トラス橋の全長60cm、トラス橋スパン長54cm、スパン中央に荷重を載荷、工作用紙は4枚以内という制約条件の中でトラス理論に基づいたペーパーブリッジの設計に取り掛かった。設計の補助ツールとして、有限要素法による軸力計算のコードを与え、荷重載荷時の挙動予測などを行いながら、グループごとで最適な構造の橋を作るための討議がなされた。

PC室での数値解析コードによる設計

ペーパートラス作製状況

4日目は、写真2に示したように、工作用紙を用いての製作を行った。グループメンバーが協力し合い、作製方法について議論しながら、取り組んでいた。トラス計算方法の確認、二次元有限要素法のコードを用いた挙動予測、作製のしやすさも含めた再検討が、実務とほぼ同じ流れで行われた。写真3に完成した10班分の作品を示す。

載荷試験を実施し最大荷重を競い合う

5日目は写真4に示すように、各班の完成したトラス橋のデザインコンセプト、工夫した点などのプレゼンを行った後、載荷試験を実施し、最大荷重を競い合った。載荷試験時には、二次元のトラス理論通りにはいかない新たな課題が多く見出された。写真5に示すように、三次元的な方向の影響、接合方法、軸力以外にもロープをかけた部材に作用するモーメントの影響、部材の断面形状、部材長さと座屈強度など、様々な検討課題が生じた。

完成した作品群(10班分)

班ごとによる作品の発表状況

予想に反した破壊形態

今後も継続的に英会話力の向上を目指す

10班分試験したところ、破壊荷重の最大値は253[N]、平均147[N]であった。 この後、昼食を兼ねたフェアウェルパーティー、閉講式を終え、予定通り終了した。 ペーパートラス橋の製作は、受講者のレベルに応じて初心者から専門家まで楽しめるテーマで失敗がない。各班で製作した多様なペーパートラス橋の載荷試験は、大変盛り上がった。理論通りにいかなかった部分についてさらに探求をしてもらいたい。
香港学生の英会話スキルは、参加した本校学生より高く、本校学生は今後も継続的に英会話力の向上を目指したいとの意欲を示していた。
香港学生から、最後に感謝の寄せ書きをいただいた。香港の引率教員からは、帰国後、私たちのホスピタリティに大変感謝しているとのメールをいただいた。