2015年度 活動レポート 第186号:豊橋技術科学大学

2015年度活動レポート(一般公募コース)第186号

インダストリー4.0 への移行に関するMOTの可能性
豊橋技術科学大学からの報告

豊橋技術科学大学

①プログラムの概要

背景としてインドのバンガロールなどがソフトウエアを中心にInfosysなどの成功企業の出現後に、「ものづくり」を次の産業育成のテーマにしている状況がある。

バンガロールに位置するインド理科大学(Indian Institute of Science)の経営研究科では、ハイテク企業集積地での従来のICTの蓄積に「ものづくり」の技術を融合する経営戦略の研究が行われている。

他方、本学や、特に地元の豊田市周辺の世界的な自動車産業拠点は、今後、ICTとの融合による「ものづくり」のデジタル化に向けたMOT(技術管理)に強い関心を持っており、両地域間の産学交流は、従来のインドから米国シリコンバレーへの優秀な人材の移動を修正する可能性も含んでいると期待できる。

今回IIScの院生10人(修士課程6名、博士課程4名)を招聘した。

②交流の特徴と成果

学内での当該MOT研究グループの院生との研究発表・議論での研究交流や、関連授業での学部学生との議論での意見交流での専門の内容に加えて、同世代間の日常的生活についても意見交流を楽しんだ。

12月16日_大学院生とのMOTグループディスカッション

特に、来日学生に最も評判が良かったのが、学内の半導体製造施設でのクリーンルーム内の見学や、市内企業(本多電子)及び尾張の工作機械メーカー(ヤマザキマザック・オークマ)並びにトヨタ関連企業(トヨタ・デンソー)での工場見学・質疑であった。

12月14日_学内先端施設見学
12月15日_オークマ見学

本多電子の超音波博物館での展示の説明を受け、工作機械の製造工場がサイバーファクトリー化している内容を見聞し、トヨタ生産方式のオリジナルを観察し、デンソーでの洗練された生産システムについては工学的な内容に加えて、几帳面なものづくりの精神や技能士の名札を掲示して熟練者を讃える文化が新鮮に映ったようである。

また、個別に豊田市産業振興課と豊田商工会議所とにおいて、「デジタルものづくりに関する両地域の交流可能性」に関する研究発表・集団討議を通じた地域間交流の可能性・課題を調査する内容では、豊田市周辺の下請け企業による縦型の産業集積と、米国・英国に続く世界第3位のベンチャー大国インドでの大学周辺の水平型産業集積との相違がプレゼン及び議論の中で顕著になった。

12月18日_豊田商工会議所会員とのワークショップ

加えて、トヨタ幹部とのFCV開発やインド市場でのコンパクトカーの市場割合に関する議論も白熱し、具体的で建設的であった。

最終日における徳川園鑑賞では日本の伝統的な文化を直感的に理解し、園内散策が好評であった。また、トヨタ産業技術記念館では、中部圏が繊維産業から自動車産業に移行した流れを体験的に理解できたようで好意的な意見が多かった。

③将来の課題と展望

現在、インドに進出中の1300社の日系企業のほとんどが大企業であり、今後、インドのソフトベンチャーと日本のものづくり中小企業との交流は、日本のベンチャー・エコシステムの向上に有効であると思われる。