2014年度 活動レポート 第21号:第2陣(11) 「さくらサイエンス・ハイスクールプログラム」第2陣、報告会と修了証授与

さくらサイエンス・ハイスクールプログラム 第21号

「さくらサイエンス・ハイスクールプログラム」第2陣、報告会と修了証授与

独立行政法人科学技術振興機構(JST)

中国からの高校生第2陣、71人の報告会がプログラム最終日の8月1日(金)に行われました。来賓として文部省科学技術・科学政策局の坂口昭一郎科学技術・学術戦略官(国際担当)、外務省アジア大洋州局中国・モンゴル第二課の伊藤直人首席事務官、在日本中国大使館科技処・阮湘平公使参事官らが出席し、挨拶を述べました。

高校生からは、楊一帆さん(済南外国語学校)らA班・B班から4名ずつ、計8人が発表。「この研修を通して、ものの見方が大きく変わった」「科学者として研究しているだけではダメ、人として成長することが大切」「中日の科学技術の関係を深め、アジア発展のために一緒に努力していきたい」など、この一週間の成果を報告しました。

最後に沖村憲樹JST特別顧問が講評を行い、生徒の代表に修了証を授与しました。

沖村JST特別顧問から授与された修了証を胸に記念撮影

その後、歓送会が行われ、中国の高校生たちは短かいながらも充実した日々を振り返りながら楽しいひと時を過ごしました。

最後に全員で記念撮影

報告会でのスピーチは次の通りです。

 
文部科学省科学技術・学術政策局 坂口昭一郎科学技術・学術戦略官(国際担当)の挨拶

さくらサイエンスプログラムでの皆様の来日を歓迎します。
世界のグローバル化の中で、中国をはじめアジアの国々との国際交流は重要な課題です。
特に未来を担う若者の交流、科学技術分野での交流はアジアの未来にとっても非常に重要です。
今回のさくらサイエンスプログラムのさくらサイエンス・ハイスクールプログラムでは優秀な皆さんに一週間の間に日本の大学、研究機関等で日本の最先端の科学技術に触れていただきました。
この他 日本のノーベル賞受賞者の講演また日本の高校生との交流の機会もっていただくなど、有意義な時間を過ごされたものと思います。
今回の経験を活かし、今後、日本の大学への進学や研究機関での長期の滞在につなげていただくことを期待します。
文科省としてはさくらサイエンスプログラムは中国を始めとするアジアの国々とのつながりを強めるものとして事業の強化に努めてまいります。
今回の皆様の滞在を通じ、日中の科学技術の交流が一層深まることを期待するとともに
交流の経験をもとに皆様の輝かしい未来が開かれていくことを希望します。

外務省アジア大洋州局中国・モンゴル第二課 伊藤直人首席事務官の挨拶

報告会にお招き頂き光栄に存じます。
我どもは常々色々な場所で日中の交流、特に青少年の交流の大切さを訴えていますが、これは私自身の経験でもあります。高校生時代に訪中団の一員として中国を訪問し、一週間を北京で過ごし高校生と交流しました。その経験は私の宝物です。それは初めての外国であり、初めての中国であり、その時非常に大切なものを学び、私の将来の行く道を決めました。
その経験から、若いときに新しいものに触れる、新しいものを学ぶ大切さを痛感しています。
今回のプログラムで、皆さんは一流の科学者に会い、トップの研究機関を訪問したほか、日本の伝統文化にも触れられるなど非常に多彩な経験をされたことをうらやましくも思います。私の母校の早稲田大学を訪問されたことも個人的にはうれしく感じました。
今日は皆様の報告を楽しみにしています。

中国大使館・阮湘平公使参事官の挨拶

JSTの皆様、本日は報告会にお招きいただきありがとうございます。また、先日、高校生の代表と先生方が中国大使館を表敬訪問され、大使夫人にご挨拶をして頂きました。大使館を代表してこの場を借りて御礼申し上げます。
JSTは中国と日本両国の科学者の交流や民間の交流に尽力されています。このプログラムも文科省、外務省の支援もあってスタートしたと聞いております。
青少年の交流は世界の平和にとって非常に重要です。中日両国の理解を深めていくことが何よりも大切だと思っています。先日、第1陣の報告会にも参加させて頂きましたが、短い間にも係わらず、皆さんが多くの成果を得たことを知りました。
きっと第2陣の皆さんもそうだと思います。この機会に、今回感じたことを十分に述べて下さい。今回の訪問を通じて、国際的な交流能力を深めて頂き、そしてそれがきっと今後の皆さんの糧となると信じています。

中国人高校生のスピーチ

2-A班 楊一帆さん(済南外国語学校)のスピーチ

今日は、皆さんと私の感じたことを分かち合いたいと思っています。
今回、私たちは中国と日本の両国の協力の下で、日本に来ることができました。皆さんに考えてほしい問題が二つあります。まず一つは、私たちはどういった目的を持って日本にきたのでしょうか?
また、そして何を得たのでしょうか?
日本に来る前の私の理解は、アニメや日本の音楽、『菊と刀』、『武士道』といった本からものでした。しかし、日本に来てそのイメージがもっと大きく膨らみました。
最初に会ったのはコーディネータの方々ですが、皆さんとても熱心に世話をしてくださいました。JICAの研修センターに泊まったことも良い経験でした。同じように宿泊しているさまざまな国の人たちとも交流することができました。
日本に来て、最先端の技術、大学、研究所などを見て、自分が中国の科学技術についていかに何も知らないか、ということに気づきました。そして、もっと自分の国を知り,科学を知らなければいけないと感じました。

2-A班 徐依馨さん(済南外国語学校)のスピーチ

私は中国を一度も離れたことがないのに、日本に来てとても見慣れた国のように感じました。同じ肌、同じ目の色、高層ビル、古い建物、漢字などとても親しみを覚えました。中国では日本のアニメが良く見られていますし、また中日間にごたごたがあるのも事実です。
でもこの懐かしさは何だろうと思いました。それはまるで長い間、離れ離れになっていた兄弟と再びあったような気持ちでした。
日本に来て共助の精神や深く探求を続けていくといった精神を学びました。また、心からの挨拶、点字ブロック、障がい者のためのトイレなどを見ると日本に尊敬の念を感じざるを得ません。
日本の科学文化は心と頭と手を使っています。科学技術のイノベーションを人と自然のために使い、長い視野で持続可能な発展を考えています。この6日間のプログラムは、宿舎・食事・見学など、どれをとっても本当に良く考えられていました。このような素晴らしいプログラムを企画され、運営された関係者の皆さまに心より感謝します。

2-A班 郭家さん(河南省実験中学)のスピーチ

中国の真ん中の河南省からきました。今回「さくらサイエンスプログラム」に参加できてとても嬉しく思っています。毎日のプログラムが私に大きな感動を与えてくれました。
高校生が科学に対しどのように勉強するかといったヒントをノーベル賞受賞者の鈴木章先生からもらいました。先生はOrganic Chemistryという本を読んで、それがカップリング研究の大きなモチベーションとなった、とおっしゃいました。人はいつどこで自分を変える本に合うか分かりません。そのためにはたくさんの本を読まなくてはいけないと思いました。
東大で電気回路を学んだり、防災センターでは地震を体験することができましたが、どれも驚きでいっぱいです。
さまざまな施設を見学し、研究者の皆さんのお話を聞いて、高校生としてこれからどのように科学を勉強していくかという点でとても参考になりました。それはインスピレーションなどはない、絶えず自分の考え方を試していく。そして小さな流れが段々大きなものとなっていくのだということです。
科学技術には人類の存亡がかかっています。科学者はいつも人々の幸福を願っていなくてはならないということを改めて学びました。

2-A班 陳雨禾さん(北京第4中学)のスピーチ

今回の訪日は短い間でしたが、有名な科学者たちに会い、さまざまな研究所や施設を訪れることができました。しかし私たちが交流したのは、科学技術だけではありませんでした。
日本の人たちがいかに礼儀を重んじているかを学びました。人と会えば、皆、お辞儀をして「こんにちは」、夜は「こんばんは」と挨拶してくれます。
また、協力しあうことの大切さも学びました。今回、JSTが私たちを招いてくれたのは、「中国と日本との科学技術の交流を深める」というためですが、その面からも自分の国のことだけを考えていてはいけない。皆と一緒に発展していくことが大切だと思いました。
日本に来て何よりも私が印象深かったのは、日本人がルールを守る、という点です。ゴミが細かく分別されているのにも驚きましたが、人々がそれをきちんと守っていることにも感心しました。総ての市民がルールを守るのは一朝一夕ではできません。日本ではそれがもう習慣となっているのだと感じました。
今回日本で得た多くのことを国に持ち帰り、自分たちが実践すると同時に下の世代にも伝えていきたいと思っています。

2-B班 梁堃昌泰さん(合肥一中)のスピーチ

日本での1週間という短い期間に多くの経験をしました。個人の旅行では叶えられない貴重な体験でした。著名な科学者の先生方との交流ではご自身の体験を伺いました。皆さんは科学に身を投じること、人々の生活をよりよくすることの大切さを教えて下さいました。それにより科学の世界で生きていくためのKey Pointを得ることができました。
それは強い興味を持つということです。それが、基礎を固めるための助け、また困難に直面したときの助けとなるということ、そしてもう一つ大切なことは社会をよりよくしようと思う気持ちを持つということです。
日本では進んだ科学技術に触れることが出来ました。その点、中国はまだ距離があります。その距離を埋めていくのが私たちなのだと思いました。

2-B班 奇帥さん(呼和浩特第二中)のスピーチ

私は内モンゴルから来た生徒を代表して、私たちを受け入れて下さった皆さんに感謝いたします。1週間の交流で視野が広がりました。まずJAMSTECで見たことがない海底生物を見ることが出来て、ものの見方が変わりました。
ノーベル賞を受賞した科学者の先生方の熱い探究心も学びました。東京大学、また早稲田大学で優秀な学生たちや、中国から日本に来ている留学生とも交わることが出来ました。彼らの夢を追い求める姿勢は私に刺激を与えてくれました。これからの進路を決めるための大きな助けとなりました。

2-B班 丁懿銘さん(華東師範大学第二付属中学)のスピーチ

楽しい1週間があっという間に過ぎてしまいました。日本は資源が少なく、自然災害が多いのにアジアでトップなのは素晴らしいことだと思いました。
教育も早稲田の学生の生活能力の高さを感じましたし、東京大学ではハイレベルの施設が与えられていることに驚きました。花王ミュージアムでは工場の生産レーンが効率良く、製品1つ1つのクオリティが高いと思いました。
ノーベル賞受賞の先生方からのお話から、自分の中にInnovationが必要だと知りました。日本ではそれぞれの施設が効率を考えています。このような意識が積み重なり、大きな川になるのだと思いました。今回の訪問は人生のなかで忘れられないものになると思います。

2-B班 範嘉悦さん(復旦附中)のスピーチ

1週間のプログラムはよく考えられていたと思います。スタッフの皆さんもよくお世話をしてくださいました。プログラムの中で印象に残っているのは、ノーベル賞受賞の鈴木章先生のお話で、「もし今日失敗したとしても、明日考え続ければ解決できる」ということと、「アイディアは突然現れてくるものではなく、永年の積み重ねによるものである」ということです。
また東京大学の研究員の一人は、「個人的な実績よりも社会的貢献が大事だ」と言われました。日本はこのような社会的責任に溢れる多くの科学者がいます。また、未来館の毛利衛館長は「科学は身の回りにあり、幸せは心の中にある」と言われたことも忘れられない思い出です。

中国人高校生の引率者の挨拶

趙丹先生(済南外国語学校)の挨拶

今回の参加者は皆、日本の高い科学技術に興味を抱いて来日しました。到着時から各地で温かいおもてなしを受けました。心から感謝いたします。
日本には高度な技術があります。皆、今回の訪問を通じて、インスピレーションを受けました。世界トップレベルの科学者と接する機会を与えられ、日本の名門大学で学ぶという将来の選択肢も与えられました。
東京という美しい街の景色は今まで知らなかった世界でした。この貴重な経験を与えてくださった方々皆さんに感謝いたします。私は日本の方々にも中国を訪れていただき、文化の交流が続くように祈っています。

鮑康勝団長(合肥市第六中学)の挨拶

私たちはこうして静かにやってきて、静かに去ろうとしています。東京の輝く雲も心に刻んで持ち帰ります。
滞在中、光栄なことにノーベル賞受賞の先生方にもお会いできました。お二人から科学への強い情熱を感じ、また若い人を育てる愛情も感じました。
今回の企画を実施してくださったJSTの方々に感謝したいと思います。実に多彩で充実したプログラムでした。76人を代表して感謝申し上げます。お世話してくださったスタッフの皆さんもありがとうございました。参加者一同、これから共に探求し進歩していきたいと思います。
未来を信じ努力していきましょう。海に向かう暖かい風に吹かれて、花が咲き誇ることを祈ります。

注:中国の「中学」は日本の「高校」に相当。