2014年度 活動レポート 第15号:東京理科大学光触媒国際研究センター 寺島千晶 准教授

特別寄稿 第15号

さくらサイエンスプログラムから発展した双方向交流事業
寺島 千晶

執筆者プロフィール

[氏名]:
寺島 千晶
[所属・役職]:
東京理科大学光触媒国際研究センター・准教授
[略歴]:
東京理科大学理工学部物理学科卒業、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士 (工学)。
東海旅客鉄道株式会社総合技術本部主幹研究員、名古屋大学大学院工学研究科特任准教授を経て、現在、東京理科大学総合研究機構光触媒国際研究センター准教授。
 

さくらサイエンスプログラム実施内容について

受入機関 東京理科大学
送出し国・機関 韓国・全南大学
招へい学生数 8名
招へい教員などの数 2名
実施した期間 平成26年10月26日(日)から平成26年11月1日(土)
 

双方向交流事業の実施内容について

受入国・機関 韓国・全南大学
送出し機関 東京理科大学
学生数 7名
教員数 1名
実施した期間 平成26年12月21日(日)から平成26年12月24日(水)
 

1.今回の交流のきっかけと目的

わたしが所属する東京理科大学の光触媒国際研究センターは、日本発の世界に誇れる科学技術の一つである光触媒科学を研究するとともに、世界に向けて情報発信し、共同研究などを行っている。その活動の一環として、平成26年2月に韓国の全南大学触媒研究所と技術交流の覚書を締結し、まずは教員の交流を始めたところであった。
実際に3か月後の5月中旬に韓国光州に位置する全南大学を訪問した。このときは藤嶋昭学長(光触媒国際研究センター長を兼務)とご一緒し、触媒研究所の金鍾鎬教授及び全南大学総長とも面会した。Byung-Moon Jee総長からは大学間の連携も視野に入れて積極的に共同研究を進めていきたいとのお話しもいただいた。

ちょうどそのような時期にJSTからさくらサイエンスプログラムの案内があり、この事業の方針と我々の活動がうまくリンクできるのではないかということで、さくらサイエンスプログラムに申請し採択となった。
藤嶋先生が実施責任者となり平成26年10月26日から11月1日の期間、全南大学から大学院生8名を含む合計10名が来日した。詳細は一般公募コース第116号の活動報告に記載してあるが、要約すると、光触媒を中心とした共同実験を通して学生間の交流がうまく滑り出したという印象であった。

このように折角築いた友好関係をより深めていくには、双方向交流が必要ではないかと考え、東京理科大学の自助努力により日本人学生を短期間でもよいのでまずは先方の大学に派遣し、さくらサイエンスプログラムで生み出された絆を固いものにしていくお手伝いをした。
また、日本の魅力を一方的に押し付けるだけではなく、相手国の技術、文化を学ぶことは、真の意味での交流形成にとって当たり前のことであり、交流が継続・発展することで双方の科学技術の発展に貢献することを目的として双方向交流を実施した。

2.韓国でどのような交流だったのか

さくらサイエンスプログラムで来日し芽生えた絆を冷めないうちに確かなものにしようと、短期間でもよいのですぐに訪韓するのがよいと考え、暮れの12月21日から三泊四日で光州にある全南大学へ訪問した。
韓国の学生が来日したときに主に行動を共にした日本人学生の中から選抜し、学部生3名と大学院生4名そして私が引率し合計8名で訪れた。
ほぼ2か月ぶりの再会であったが、学生間でやりとりをしていたらしくスムーズな交流と友情の芽生えを感じた。短い滞在ではあったが、学長への表敬訪問とセミナーを実施し、韓国学生による研究紹介を兼ねた共同実験も行った。

触媒研究所ではゼオライトと酸化チタンからなる吸着能に優れた光触媒材料の研究開発とその実用化を進めているようで、その実験について金教授の指導のもと日韓の学生達が共同で確認し合った。
また、全南大学が位置する光州市の歴史を学ぶため光州民族博物館を訪れ、光州市内の市場などでも韓国の生活様式を体感することができた。

学長主催の晩さん会では韓国伝統の韓定食を食し、楽しく交流を深めた。ちょうど訪韓したときは積雪もあり、寒さだけではなく移動も大変ではあったが、暖まる交流を持つことができた。

韓国での共同実験の様子

全南大学長主催の晩餐会

全南大学キャンパス内での集合写真

3.このように発展した意義、効果など

冒頭で述べたように研究所間の技術交流覚書だけでは具体的に話しを進める推進力に欠けており、実際にはなかなか交流をもつことが困難なことが多い。それをさくらサイエンスプログラムが後押ししてくれたおかげで、若い学生達の双方向交流が実現した。
今は彼らから交流を続けてほしいとの強い要望もあり、日韓の教員が努力し、どうにか継続した学術交流ができるように努めている。このような活動によってまずは絆を固くすることができ、その先には必ずや共同研究も見えてくると期待できる。

また、韓国の博士課程の学生もさくらサイエンスプログラムで来日したが、博士修了後には光触媒国際研究センターでポスドクとして研究を続けていきたいとの申し出もあった。このように真の意味での学術交流を継続していくには、交流のきっかけとなるさくらサイエンスプログラムのような事業及び双方向交流事業などが大変意義あることであろう。

最後に、このようなきっかけを作っていただいたJSTさくらサイエンスプログラムと双方向交流事業を企画していただいた藤嶋先生ならびに本学研究推進課及び国際交流課のご支援に感謝いたします。